Matrix-AIDAナイフコンテスト 結果発表

はじめに、このコンテストに関わっていただいた全ての皆様に厚く御礼申し上げます。
ご応募いただいた皆様、投票にご参加いただいた皆様、興味を持ってご覧いただいた皆様、SNSなどで拡散していただいた皆様、そして無償にも関わらず快く重責を担っていただいた審査員の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

最下部に掲載したWeb投票の結果が物語る通り、受賞作の選定は困難を極めました。
できるならば横並びで全てを大賞にしたいくらいでしたが、コンテストと銘打っている以上そうするわけにもいかず、審査員は皆、心を鬼にしてまさに断腸の思いで受賞作を選定いたしました。そんな力作ぞろいの中で見事に受賞された方々に、ぜひ心からの祝福を送っていただければと思います。

惜しくも受賞に至らなかった作品についても、どれが受賞してもおかしくないほど素晴らしいものばかりでした。改めてすべての作品と作者の皆様に敬意を表します。

なお、受賞作に関してはカメラマンの中根祥文氏に改めて写真を撮っていただけることになり、2021年3月ごろ発売のナイフダイジェスト誌に掲載される予定です。掲載された暁にはナイフダイジェストをぜひお買い求めください。


僭越ながら受賞各作品へコメントを付けさせていただきました。審査会での審議内容や評価を元にいたしましたが、文責はすべて相田東紀にございます。ご承知おきのほど何卒よろしくお願いいたします。

以下、受賞作品のご紹介となります。ぜひゆっくりとお楽しみください。
なお、すべてのエントリー作品は以下のリンクでご覧いただけますので、併せてご覧ください。Matrix-AIDAナイフコンテスト エントリー作品一覧

目次


大賞

No.047 大泉聖史 / 里山プーッコ

フィンランドの伝統的なプーッコに和のテイストを違和感なく融合させた、類まれなる技術とセンスに驚嘆しました。デザインの美しさをはじめ、工作精度、機能、全てを網羅した傑作です。
ブレードの風合い、ハンドルの粗い木目を残したやれた質感、見事にエイジング処理された真鍮と銅の口金、全てのパーツが個々に完璧な仕上がりで、かつ互いの存在感を引き立て合い、全体の統一感を演出しています。コンセプトと仕上がりに何ひとつ齟齬がない完璧な構成が評価されました。シースの仕上げとデザインもナイフの雰囲気と見事にマッチしていて、なおかつ挿入時にはナイフがカチッと気持ち良くロックされ、安心感あるものでした。

見た瞬間に「欲しい。手に入れたい」と所有欲を刺激され、持ってみてやはり欲しくなる。まさに大賞にふさわしいナイフでした。

ベスト・シースナイフ賞

No.076 加藤拓人 / 紫電一閃

日本刀とカスタムナイフの要素を見事に融合させた、真の和風ナイフともいうべき作品です。”玉鋼のナイフ”というだけですでに特別で価値あるものですが、そこからさらに作品を練り上げていく姿勢に脱帽です。

ナイフ本体はハンドル部分のネジを抜けば分解可能。ヒルト部分ははばきのように外せて刀身を引き抜くことが出来ます。シースの造形もユニーク、かつギミックも見事で、ナイフを挿入し、ワンタッチで確実なロックをかけることができます。

Web投票ではそれほど票が伸びなかったものの実物の放つ存在感は強く、さらに他では真似できない唯一無二のスタイルということで各審査員から高評価を得ました。Made in Japanのカスタムナイフに新たな可能性を見出した作品と言えるのではないでしょうか。

ベスト・フォールダー賞

No.013 岩本伸一 / ランドールM3スタイル セーフティハンター

オープン時のシルエットはランドールM3のイメージそのまま。しかし実はフォールダーという遊び心のあるナイフ。シースナイフを違和感なくフォールダーにする構成力と、それを実現してしまう技量に感服しました。ロールアップヒルトが角度によって引っ掛かりがあるなど、少しもったいないところもありましたが、それを補って余りある魅力的な雰囲気を持ったナイフで、特にギミックの面白さ、素材の生かし方が秀逸でした。レザーシースも折り畳み用、シースナイフ用と2つも製作されるなど、楽しんで作っているのが伝わってきました。

ベスト・オブ・ザ・レスト賞

No.049 重野 守 / ペティナイフ

ハンドルの造形の美しさとその緻密な仕上げに魅せられて何気なく手にしてみると、その軽さと持ちやすさに驚き、思わず笑みがこぼれてしまいました。美しいものを手にする喜びと使う楽しさが共存した素晴らしいキッチンナイフです。

元々のアイデアは他メーカーのものであるとはいえ、それを即興で自分のものとして完璧に仕上げてしまうその技術とセンスはさすが。重野さんの新たな一面を見つけられたようなそんな気がします。

すでに世界で活躍するプロメーカーが受賞することに関しては賛否ありましたが、本来の自分の分野とは離れたキッチンナイフという新境地での挑戦ということもあり、公正に審査した結果、見事受賞となりました。これまたぜひ使ってみたいと思わずにはいられない魅力を持った素晴らしいナイフです。

審査員特別賞(圷正史氏推薦)

No.007 中本尚宏 / セミ・インテグラル・シティクラブ(コンシールドタングヒドゥンボルト)

小柄なナイフでありながら、その存在感は群を抜いていました。

その理由は煌びやかな装飾だけではなく、細部までまったく手を抜くことなく作り上げられた実直なナイフであるからかもしれません。インテグラル構造のブレードは小さいながらに迫力満点、妥協が一切ないミラー仕上げ、コンシールドタングの合わせ面の緻密さなど工作精度は抜群で、シースの出来栄えも秀逸。アートナイフとしての要素も併せ持つ極めてレベルの高い作品でした。

審査員特別賞(服部夏生氏推薦)

No.028 吉田雄一 / 5インチ ペティ

ペティナイフという、ともすれば一般的で単純すぎてもう改善の余地のないような刃物も、ナイフメーカーが作るとこうなるという好例ではないでしょうか。

インプルーブドハンドルは極めて握りやすく、作業の邪魔になることもない絶妙な起伏。ナイフショーやお店で数あるものの中から「思わず手にしたくなる」というのはナイフの魅力を測る尺度のひとつですが、これはまさにその魅力を持ったペティナイフといえます。

審査員特別賞(ヒロ・ソガ氏推薦)

No.069 Asurah Knives (萩野 力)/ TOUGHNESS MAX -finisher-

無骨な外見からは全く想像できないほど軽い、驚くべき構造です。「インテグラルは重い」という固定観念や、「スケルトンナイフは貧相」というような一般論を力技でねじ伏せた意欲作。カスタムナイフの持つ価値を測る場合、機能だけではなく、見た目の美しさや所有欲の満足度という尺度もあると思いますが、このナイフはそれらを見事に網羅したものと言えます。フライス加工のツールマークの乱れもまたその無骨さを演出する魅力のひとつとなっています。

審査員特別賞(ナイフダイジェスト編集部・渡辺氏推薦)

No.025 平出伯展 / インプルーブドケーパーナイフ

選択したデザイン、素材、いずれもラブレスのコンベンショナルなモデルで見慣れたものでもあるのに関わらず、ついつい目が行き触ってみたくなってしまう。そういう魅力を持ったのが良いナイフだと思いますが、このナイフはまさにそれ。

奇をてらうことを一切せず、丁寧にブレードを削り、傷がなくなるまでひたすら磨き、ハンドルは握りを確かめながら限界まで追い込む。良いナイフができる必要条件をすべて満たしたナイフでした。自作の木工のランヤードビーズも見事で、さらなる飛躍が期待されます。

審査員特別賞(中根祥文氏推薦)

No.072 境 志泰 / 流星

シンプルなデザインを独自の素材構成と完璧な仕上げで作り上げるという、コンテストで言えばいわば直球勝負。それが功を奏して見事に審査員の心をとらえました。

隕鉄鍛造のブレードは地肌が幻想的に光り輝き、ロマンを感じずにはいられません。適度に丸められ、丁寧に仕上げられたハンドルもまた秀逸です。自作の大きなモザイクピンも良いアクセントになっています。どこから見ても隙が見当たらない、細部の細部に至るまで神経が行き届いた素晴らしいナイフでした。

審査員特別賞(相田東紀推薦)

No.066 威風志郎【いぷしろう】(市川志郎)/ クラウ・ソラス

フラッシュライトやフック機構など多機能なのでそこに目が行きがちですが、実はブレードのグラインドの技術が抜群で、ハンドルの仕上げや面取り加工も段違いで丁寧。カスタムナイフとしての付加価値が随所にちりばめられています。またコンセプトに忠実で鋼材の選定からシースに至るまで作者のこだわりと信念を感じる素晴らしいナイフでした。Web投票で最高得点をマークし、人気も抜群であったことも納得です。正直言って実物は写真の100倍いいです。

審査員特別賞(相田義正推薦)

No.014 下谷拓也 / Super Big Bear

ビッグ・ベアを超えた圧巻のスーパー・ビッグ・ベア。ブレードのグラインド、シース、エングレーブに至るまで一切の妥協がない、まさに大作です。これほどの長いブレードを均等に削る技術力、そして鏡面に磨き上げる根性、一糸乱れぬシースのステッチなどあらゆる面で優れた作品です。大きなナイフの場合、どうしても大味になり、磨き残しや細部に妥協の痕跡が見られますが、これに関してはそれが全くない。微に入り細を穿つとはまさにこのことでしょう。恐れ入りました。

受賞者一覧表

大賞No.047 大泉聖史 / 里山プーッコ
ベスト・シースナイフ賞No.076 加藤拓人 / 紫電一閃
ベスト・フォールダー賞No.013 岩本伸一 / ランドールM3スタイル セーフティハンター
ベスト・オブ・ザ・レスト賞No.049 重野 守 / ペティナイフ
審査員特別賞(圷正史氏推薦)No.007 中本尚宏 / セミ・インテグラル・シティクラブ(コンシールドタングヒドゥンボルト)
審査員特別賞(服部夏生氏推薦)No.028 吉田雄一 / 5インチ ペティ
審査員特別賞(ヒロ・ソガ氏推薦)No.069 Asurah Knives (萩野 力)/ TOUGHNESS MAX -finisher-
審査員特別賞(ナイフダイジェスト編集部・渡辺氏推薦)No.025 平出伯展 / インプルーブドケーパーナイフ
審査員特別賞(中根祥文氏推薦)No.072 境 志泰 / 流星
審査員特別賞(相田東紀推薦)No.066 威風志郎【いぷしろう】(市川志郎)/ クラウ・ソラス
審査員特別賞(相田義正推薦)No.014 下谷拓也 / Super Big Bear

【参考資料】Web投票と店舗投票の結果

Web評価得点平均上位10名

Web審査での評価点の平均点を算出し、上位10名を表記しました。応募者全体からみた偏差値も併記しました。

順位エントリー番号氏名WEB得点偏差値
166市川志郎4.1166.9
233伊藤千鶴4.0966.4
347大泉聖史4.0765.8
472境 志泰4.0565.3
514下谷拓也3.9763.1
61堀 英也3.9362
742大泉好孝3.9362
813岩本伸一3.9161.4
916長友隼人3.9161.4
1051向 大喬3.8860.6
※10位のエントリー番号51番の作者名が間違っておりました。正しくは「向大喬様」です。訂正し、心よりお詫び申し上げます。(訂正:2021/1/28)

ベスト・シースナイフ賞 投票結果グラフ

スマホなどでうまく全体が表示できない場合は、こちらのリンクからご覧ください。

ベスト・フォールダー賞 投票結果グラフ

スマホなどでうまく全体が表示できない場合は、こちらのリンクからご覧ください。

ベスト・オブ・ザ・レスト賞 投票結果グラフ

スマホなどでうまく全体が表示できない場合は、こちらのリンクからご覧ください。

大賞 投票結果グラフ

スマホなどでうまく表示できない場合は、こちらのリンクからご覧ください。

【応募者の皆様へ】 ※作品の返却期間について

応募作については1月末までお預かりして店舗内で展示し、順次返却してまいります。

ただし下記の受賞作に関しましては写真撮影のため一時的に前述の中根氏にお預けさせていただきます。撮影が終わり次第返却させていただくため、2月中旬をめどに賞状(または盾)と、ささやかな副賞と共に発送する予定でございます。

Webページでのご報告となり大変恐縮ですが何卒ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。