ブレード研磨のやり方

目の覚めるようなミラーフィニッシュ、均整の取れた美しいヘアライン。その秘密はブレードの研磨の下地の美しさにあります。その下地をいかに作るのか、その秘密をご紹介します。

用意するもの

・磨き棒(耐水ペーパーを使用するときに使います)
・オイルストーン
・耐水ペーパー(#120~#5000。仕上げの最終番手は任意です)

磨き棒

磨き棒(ラッピングスティック)にはなるべく硬い素材、銘木やマイカルタ、G-10などの素材を加工したものを使用します。
耐水ペーパーを同じ幅に短冊状に切ったものを用意し、指で引っ張りながら当て板にします。

・フラットグラインドを研磨する場合は、平面がきちんと出たものを使用してください。ステンレスの棒など(ヒルト材のSUSなどが流用できます)を使用すると、ほどよい重量感があるので安定して磨くことができ、仕上がりの平面度がよりよくなります。

・ホローグラインドの凹面を研磨する際は、磨き棒の底面を加工する必要があります。ホローの曲率と同じ曲率で凸型に加工します。そうすることで耐水ペーパーとの接地面がぴったりと合い、面を崩すことなく美しく磨けます。研磨時間の短縮にもつながります。

・コンベックスグラインドの面を研磨するには、この磨き棒に厚みのある牛革や、ゴム板を貼り付けて使用します。蛤刃の面全体にペーパーを当てることができるようになります。

耐水ペーパー

磨き棒と一緒に使用します。磨き棒と同じ幅にカットして、磨き棒の先端に沿わせピンと張った状態にしながら使用していきます。番手は数字が小さいものほど粗く、大きくなるほど細かい仕上がりにすることができます。

耐水ペーパー #2500

使用する際はスプレーやオイルボトルのようなものを使って水を垂らしながら研磨していきます。その理由としては、耐水ペーパーは砥粒がペーパーからすぐに脱落してしまうため、脱落した砥粒も有効利用するためです。水をうまく使えば研磨時間を短縮することができます。また、研磨作業用の水に洗剤(界面活性剤)を少し入れると磨きがちょっと早くなるとかならないとか…お試しあれ!

オイルストーン

オイルストーンは、いわゆる手持ちの砥石です。主に金型の研磨などに使われるもので、耐水ペーパーなどよりも圧倒的に研磨スピードが早いです。耐水ペーパーは数回こするとペーパーから砥粒が脱落してしまったり、目が詰まってしまいますが、オイルストーンは研磨して減った面がまた砥石ですから無駄なく研磨作業を継続して使うことができるわけです。ミシンオイルを塗布しながら使用します。また、専用のオイルストーンホルダーを使うと手も疲れず、短くなったものも有効利用できるのでお勧めです。

オイルストーンホルダーに装着した状態

研磨していく中で形状が変わってしまうのがデメリットですが、耐水ペーパーの粗い#120とかで削って簡単に修正できます。また、オイルを使用しながら研磨をするので表面の油の薄い皮膜によって残り傷が見づらくなってしまうので、研磨の仕上がりはきちんと確認することが肝要です。

具体的なブレードの磨き方

いよいよブレードの磨き方についてご説明します。

基本的には粗い番手から細かい番手に徐々に番手を上げて磨いていくことです。
ヤスリ目やベルト目が粗い場合や深い傷が残っているときは #100~120程度から始めてください。

まずはバイスなどでナイフをガッチリと固定します。固定が甘かったり、固定するための台がグラグラしていると力が逃げてうまく磨けないし、時間もかかってしまいます。またけが防止のためにもきちんと固定してください。

1.最初に縦方向に耐水ペーパーまたはオイルストーンを使用して研磨していきます。この時、あくまでもまんべんなく全体的にペーパーを当てるようにします。早く傷を消したいからといって、傷が深い一部分だけを集中的に研磨すると、その周りだけ凹んでしまいます。特に立ち上がり(ベベルストップ)の周りは気を付けるようにしましょう。

100番を直線的にかけ終わった状態。ベルト(ヤスリ)痕が完全に消えるまでかけます

2.次に番手を上げていくわけですが、下の番手の目を完全に消していくために角度を少し変えて研磨します。本などには45度程度と記載がありますが、あくまで目安です。前の番手との角度の違いが確認できるのであれば少し角度をつける程度で結構です。

番手を上げるごとに、まっすぐ→左斜め→右斜め→まっすぐ→左斜め→……と繰り返して角度を変えていき、最終的な番手まで研磨していきます。

番手を上げる前に、磨き残した傷がないか、研磨痕が全て同じ方向になっているのかをしっかり確認してください。残念ながら傷を見つけてしまったら、そこは辛抱強く磨いてください。番手を一つずつ確実に仕上げることが完成への最短ルートです。

3.最終の番手をかけるときは、同じ番手の中でばらつきが出ないように、あまり力を入れすぎないで、まんべんなく表面をならすようなイメージで研磨します。そうしないとミラーにムラや曇りが出たりします。

4.ヘアラインの場合はおおよそ#1000~1200程度、ミラー仕上げにする場合は#2500以上の番手に仕上げてから、バフまたはリューターを用いて仕上げていきます。(これについてはまた別のコラムでご紹介するつもりです)

ワンポイントアドバイス

  • ◆何よりも大切なのは、先を急がずに一つ一つの工程をしっかり根気よく作業することです。
  • ◆下の番手がきちんと落ちたかどうかの判断は、裸電球にナイフと顔をぐっと近づけて目が痛くなるくらいよく見て確認してください。ルーペなどを使用している人もいます。もし、落とせていない傷が見つかったら、一度深呼吸をして心を落ち着かせてから再度研磨してください。
  • ◆耐水ペーパーは消耗品です。いつまでも同じ部分を使っていても時間がかかるばかりか、一定の目にならず、イライラのもとです。もったいないと思っても、5~10往復したら新しい面に替え、どんどんと交換していくようにしてください。