ナイフづくりに最低限必要なもの

いざナイフを作ろうと考えたとき、どんな道具が必要なのかを考えねばなりません。そんなときのヒントとして書きましたので、ぜひご覧ください。

刃物作りというと火を焚いて鋼を叩いて鍛えて…というイメージがあるかもしれませんが、最近のスタンダードな作り方といえば「ストック&リムーバブル」という手法です。鋼材の板に穴をあけたり、削り出してナイフを作る方法で、この製作方法のおかげで少ない道具で誰でもナイフが作ることができるようになりました。

必要な工具類

ナイフ作りに最低限必要な三種の神器をここでご紹介します。

1.ヤスリ

意外かもしれませんが、ナイフ用の鋼材として売られているものは焼きなましをされた状態で、すごく柔らかい状態になっています。そのためドリルで簡単に穴が開きますし、いわゆる鉄工用ヤスリでバリバリ削れてしまいます。

ベルトサンダーやディスクグラインダーなどで火花を散らして削っていくイメージがあるかもしれませんが、Matrix-AIDAのお客様のほとんどは最初はヤスリでナイフづくりを始めています。そして、数を作るようになって初めて機械を導入する方が多いです。

なにはなくても、まずは鉄工ヤスリ。これが全ての始まりです。
そして、ヤスリでナイフを作ることで得られたその技術は、その後のナイフメイキングの大きな糧になります。たとえバーキングを導入したとしても、生涯、ヤスリでの細かな作業は必要になるので絶対に無駄になりません。

最初にどんなヤスリを買えばいいかという疑問があると思いますが、まず第一に必要なのは平ヤスリの荒目です。荒目のヤスリは鋼材を思い切り粗く削りだすときの最初の工程に使用します。目を細かくしていくために中目→細目→単目と徐々に目を細かくしていくのがセオリーですが、まずどれか1本といえば荒目さえあれば大丈夫です。欲を言えば丸ヤスリの荒目中目も1本持っておくとブレードの立ち上がりなどの細かい部分の加工ができて便利です。

ヤスリはいくら持っていても損はありません。

ナイフ作りをしていると、緩やかな曲線を描くように凹ましたいだとか、狭いところを加工できる細いヤスリがあれば…みたいな場面に出くわすことばかり。そんな時に役立つのが特殊なヤスリです。燕尾ヤスリチェッカリングヤスリなど、最初は何に使うかわからないものでも、いざというときに必ず役に立つので、ナイフ作りを始めたならば、変わったヤスリを見つけたらすかさずゲットしておくことをお勧めします。OUTLETの工具コーナーでよいものが安く手に入る時があるので、チェックしてみてください。

2.万力(バイス)

ヤスリをかける際に、片手で鋼材を抑えて、もう一方の手でヤスリをかける…そんな非効率なことをしてはいけません。鋼材はしっかりとした台の上に万力でがっちりと固定した状態にしてヤスリがけを行ってください。

万力は、いわゆるシャコ万のようなもので大丈夫です。(本当のことを言えば自在バイスなどのように口があらゆる方向に動くタイプのものがあればいいのですが、これまで扱っていたものが廃番となってしまったので、いま良いものがないか探しています。もうちょっとお待ちくださいね)

ということで、きちんとした固定をすることで作業が安定しますし、ヤスリをかける力も無駄なく鋼材に伝わります。そうすると、ものすごく作業が早くなります。ヤスリに習熟したメーカーさんだともはやベルトサンダーと同じくらいじゃないか、というスピードであっという間にナイフを削り出してしまう人もいるくらいです。

万力と同様に大切なのが作業台。万力でしっかり固定できたとしても台が不安定だと元も子もありません。ですからなるべくしっかりとした作業台を用意してください。うちのお客様もこの作業台についてはいろいろと苦労していて、市販のワークベンチから始まり、オフィス用のデスク、流し台(笑)、ベランダのしっかりした部分、公園のベンチ…あらゆる知恵を振り絞って作業環境を作り上げています。

また、ハンドルを取り付ける際にも小さめの万力(シャコ万)がいくつかあると大変重宝します。

3.ボール盤

三種の神器、最後の一つはボール盤です。ナイフを作るならば必ず持っておいてほしいのがこのボール盤です。

たまに手持ちのドリル(電動ドリル)で作るから大丈夫というお客様もいますが、たしかに電動ドリルでも鋼材に穴をあけたり、リューターのように先端工具を付け替えて研磨作業をすることはできます。ただ、まっすぐ垂直な穴をあけることは不可能ですし、手持ちのものはトルクがないので回転数が早く、すぐにドリルが焼きなまってしまって切れなくなります。鋼材の表面が高温になって穴が開かなくなってしまうこともしばしば。

オプションでボール盤のように垂直に穴あけできるものがありますので、それを使えば手持ちでやるよりは正確に穴をあけることはできるとは思いますが、ナイフ作りをするにはパワー不足は否めません。

ですから、ナイフをやろうと心に決めたのならばボール盤だけはぜひとも手に入れてほしいと思います。そしてなるべく剛性とパワーのあるものをお勧めします。ただ、場所や予算の都合もあると思いますので、それぞれのニーズに合わせてお選びいただければと思います。一つだけアドバイスするとすれば、チャックに13㎜のドリルまで咥えられるものを選んでください。基本的にナイフ作りで使うドリル系は2㎜から10㎜くらいまでがほとんど。ですから、13㎜まで咥えられるボール盤ならばほぼパワー不足ということはありません。ご参考になれば幸いです。

もちろん、この他にもナイフづくりに必要な道具、あると便利な道具はたくさんあります。ざっと書き出すだけでも、弓鋸リューター、ベルトサンダー、グラインダー、旋盤…

ただ、一気に全部集めるのはやはり大変ですし、場所の問題もあります。必要な道具や機械はナイフメイキングの進度や習熟度に合わせて徐々に増やしていくのが良いと思います。だんだんレベルアップしていく自分の作業場を見るのもモチベーション維持につながりますよ。

参考図書

これからナイフ作りを始める方にお勧めなのはこちらのムック本。Matrix-AIDA、相田義人が全面協力して作られた「アウトドアナイフの作り方」です。ヤスリで作る方法からフォールディングナイフの作り方までを網羅したハウツー本です。

ナイフ作りをこれから始める方必携の一冊です!