カイデックスは、温度が180℃程度まで温めるとプラスチックのような硬い状態からビニールのような柔らかい状態に変化します。温まって柔らかくなっているうちにプレスするなどして形状を維持したまま冷やして硬化させ、シースやホルスターなどの形に成形します。
要は、180℃程度まで温度を上げることができればカイデックスの形状を変化させることができるわけで、その温度を出せれば温めるものは何でもいいわけです。
ドライヤーはNG!
まれに「ドライヤーでカイデックスを成形できますか?」という質問を受けることがありますが、これは無理です。ドライヤーの温度は100~120℃くらいで、カイデックスを成形するのには温度が全く足りません。ただ、一生懸命温めて、若干柔らかくなるかもしれないので微妙な調整するのに使える可能性はありますが、いわゆる板の状態を何か別のケースなどの形に成形することは無理だと思ってください。
温める方法をいろいろご紹介します
カイデックスを温めるものは温度が180℃以上まで上がれば何でもOKです。Matrix-AIDAはこれまで作ってきたシースなどはほぼ全部ヒートガンを使って成形しています。だから基本的にはヒートガンさえあればなんでもできると思っていますが、お客様からのアイデアを伺うといろいろな工夫をしているので、そんな珠玉のアイデアをご紹介します。良い道具があればそれに越したことはないと思いますが、自分のできる範囲で、なにより試してみることが大切だと思うわけです。それでは、カイデックスを温める際に使えるものをご紹介していきます。
ヒートガン
カイデックスを美しく、かつ機能的に作りたかったら絶対にヒートガン (ヒーティングガン)がおすすめです。最初の全体的な成形も、最終的なテンションの調整など、ヒートガン が一つあればすべてを解決してくれます。
一方で、ヒートガン の難しいところは熱風の噴出口が小さくカイデックス全体を温めるのに少し難儀するところです。端部を温めている間に反対側が冷め始めてしまう感じがあります。全体を均等に温めていくことがなかなか難しいのと根気が必要になります。こういう場合は箱の中で温めて雰囲気温度を高めていくと比較的うまくいきます。
この後紹介するオーブンなどは全体を温めることに長けていますが、サイズの問題や微調整ができないなど、それだけでは完成までもっていくのが難しいところが多くあります。ところが、ヒートガン は工夫次第で小回りが利いて、様々な加工をすることができます。カイデックスをやるならば、絶対持っておきたいアイテム。それがヒートガン です。
オーブン
ご家庭にあるもので、最も身近で安全にカイデックスを温めることができるアイテム、それはオーブントースターです。温度管理もダイヤルひとつで調整できます。全体を均等に温めることも容易で、海外のサイトやYoutubeなどでもこの方法がたくさん紹介されていますね。
一方で、サイズが躯体の大きさで制限が決められてしまうこと、炉内の雰囲気を温めるための時間がかかるなどのデメリットもあります。また、カイデックスは温めてからプレスするまでの時間が短いほどきれいに成型するこができますので、キッチンに置かれているオーブンを使う場合は、少し作業がしにくいことがあるかもしれません。カイデックス用にひとつ工房にオーブンを準備できれば最高です。
筆者は工房にある工業用オーブンを使っていました。全体をまんべんなく温めることができて、全体の成形がすごくうまくいきます。ただ、いい感じの温度設定と温める時間の条件を見つけるのに少し時間がかかったのと、カイデックスの硬さをチェックするためにドアを開けるとすぐに雰囲気温度が下がってしまうことで、すこし苦労しました。
ホットプレート
これもご家庭にある熱源の代表格です。いわゆる焼肉やお好み焼きをお家でやるときに使うアレです。ホットプレートもオーブンと同じく全体を均等に温めることに長けています。温度調整も目盛りを回すだけで調整することができるので便利です。
直接熱源にカイデックスを触れさせるので、オーブンよりも温め時間は短くなります。細かなテンションの最終調整などの作業はできないので、オーブンと同じくヒートガンなどと組み合わせて使うのが良いと思います。
ライター(マイクロトーチやガスバーナー)
いわゆる100円ライターのことではなく、キャンプで使えるようなターボ型のガスバーナーのようなマイクロトーチといわれるものでカイデックスを成形している方もいます。ヒートガンなどと比べて入手性が高いこと、器具自体が小さく軽量、かつ電源を必要としないので作業に気軽に取り組めることがメリットです。
一方で、直火の場合はカイデックスの表面が溶けてしまう恐れが高いのがデメリット。マットなカイデックスの表面が溶けてテカテカになってしまうことがあります。そうするとどんなにきれいに成型されていてもなんだか失敗作のような残念な出来上がりになってしまいます。直火の場合は特にカイデックスと熱源の距離感を意識する必要があります。
また、これはヒートガンよりも局所的に温めることになるので、大きめのナイフシースなどを作るときには不向きです。
ガスコンロ
一度やったことがありますが、熱量が高く調整が難しいので、あまりお勧めできないんですがガスコンロでももちろんカイデックスを温めることができます。
問題点はワークを手で持つか、なにかトングのようなものでつかんで温める必要があるのですが、その部分を温めることが難しく、ゆえに全体を均等に温めるのが至難の業です。
前述のガストーチと同じく、カイデックスの溶けるリスクもあるので、熱源との距離感や均等に温めるために常に動かしながら作業する必要があります。筆者がやったときはすこし溶かしてしまっていやなガスが出てきてしまい部屋が臭くなったことがあります(苦笑)。また火事のリスクもあるので、できれば携帯コンロを使うなどして、消火の準備を整えた上で屋外で作業することをお勧めします。
電気ストーブ
電気のストーブを熱源に利用したお客様もいらっしゃいます。「電気ストーブの前でカイデックスを持ってしばらく待つ」というすごくシンプルな方法です。これもガスコンロと同じく、熱源固定スタイルなので、カイデックスをまんべんなく温めるためにずっと動かし続けなければならないのがデメリットです。ただ、熱源が大きめなのでカイデックスのサイズが大きくても加工可能になります。また、一部が溶けてしまったりするリスクも小さいので、その点はガスコンロなどよりも作業しやすいと言えます。
ストーブの前でじっと佇まなければならないので、作業性は極めて悪いと言わざるを得ません。ただ、自宅にあるものの中で安定して温めることのできるアイテムのひとつであることは間違いありません。試しやすいと思います。
焚火
これは番外編でネタ的なものです。 アウトドアを楽しみながらカイデックス工作を楽しむなら、焚火。アウトドア雑誌の「Fielder」にて掲載された方法で、誌面の中で焚火でカイデックスを温め、見事ペティナイフのケースを成形していました。ガスコンロなどよりも広範囲で温められるので実際作業はしやすいかもしれません。これはネタですが、熱源さえあればどんなものでカイデックスを成形することができるという例として挙げました。
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以上、上記のような方法でカイデックスを温めることができます。 ご家庭にあるアイテムはじめることができますし、工夫次第で専門的な工具類がなくても気軽に始めることができます。ぜひこの機会にカイデックス工作にトライしてみてはいかがでしょうか?
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